労働者を初めて雇う時に初めて「労働保険料」=労災・雇用保険料を納付する義務が発生します。でも、一体何をしてどこに保険料を納付をすればよいのでしょうか?この記事では、人事・経理コンサルタントが労働保険料の加入手続きや概要をわかりやすく解説したいと思います。
労働保険とは?
「労働保険」とは、労災保険(労働者災害補償保険法)と、雇用保険のことを総称してこういいます。
労災は、ご存知のかたも多い通り、業務上の災害や通勤上のケガを補償する保険になります。雇用保険は失業した時や教育訓練の時などに補償される保険です。
保険給付自体は両方とも別々に行われているのですが、納付等については一体として扱われています。
労働者(パートタイムやアルバイトも含む)を一人でも雇うことになった時に初めて、業種や規模を問わず、労働保険が適用されます。適用されたら事業主は成立の手続きを行い、労働保険料を納付しなければいけません。(農林水産の一部の事業を除く。)ただし、労災保険は一人でも雇うことになったら必須ですが、雇用保険の場合は次の2つを満たす従業員がいる場合に加入になります。
- 31日以上雇用見込みがあり
- 1週間の所定労働時間が20時間以上ある労働者
ですので、「労災保険のみ加入」という場合もあることを覚えておいてください。つまり、簡単な補佐レベルのアルバイトを一か月以内、みたいなことなら雇用保険はいらない、ということになります。
また、管轄は厚生労働省です。
設立手続きが行われていないと、さかのぼって労働保険料を徴収され、追徴金もとられることになりますし、平成17年度より罰則も強化されていますので、申請手続きは遅滞なく行うようにしましょう!
労働保険成立の概要や加入手続きとは?
一元適用事業と二元適用事業
労働保険の適用事業は、一元適用事業と二元適用事業に業種によって分かれており、手続きの仕方が変わります。
簡単に説明すると農林漁業・建設業等が二元適用事業で、それ以外の事業が一元適用事業となりますので、一元適用事業が数的には多いでしょう。
一元適用事業とは?
一元適用事業は、
労働保険の保険料の申告・納付等を労災保険と雇用保険をまとめて行うことができる事業所
を意味しています。農林漁業・建設業等以外、すべての事業所です。
これは、二次元適用事業と違って簡易的に申告納付が出来るためです。
ただ、労災保険がない企業の場合は一元適用事業でも、雇用保険のみで保険料を申告すればよいです。
二元適用事業とは?
二元適用事業は
労働保険の保険料の申告・納付等を労災保険と雇用保険を別々に行う必要がある事業
を意味しています。農林漁業・建設業等が当てはまります。
なぜかというと、建設業では労災保険は元請業者が建設工事に従事する下請け含むすべての労働者の保険を掛ける仕組みになっていますが、雇用保険は元請も下請も別々で掛けるため、労災保険と雇用保険を分けて行う必要があるからです。
労働保険を簡単にまとめると、下記の表になります。
労災保険 | 雇用保険 | |
適用の条件 | 従業員が1人いる場合に加入必須 | 次の2つを満たす従業員がいる場合加入 ・31日以上雇用見込みがあり ・1週間の所定労働時間が20時間以上ある労働者 |
概要 | 従業員の業務中または通勤中の病気や怪我、死亡などに対して給付される保険 | 従業員が失業、育児・介護で働けなくなった時に給付される保険 |
保険料 | 全額会社(事業主)負担 | 会社(事業主)と従業員が折半 |
手続きの窓口 | 労働基準監督署 | ハローワーク |
手続きの期間 | ①保険関係成立届 従業員を雇用した日(保険関係の成立)の翌日から10日以内 ②概算保険料申告書(納付書のこと) 従業員を雇用した日(保険関係の成立)の翌日から50日以内 | (労災保険の①の届が成立した後に手続きを行います) ③雇用保険適用事業所設置届 設置の日の翌日から起算して10日以内 ④雇用保険被保険者資格取得届 資格取得の事実があった日の翌月10日まで 他、提出時に必要書類あり(雇用契約書など) |
この表のとおりに手続きをしていくのですが、上記の手続きの期間は一元適用事業の届け出の方法になります。①を提出して、労働保険番号をふってもらったら、②と③→④を同時に進行します。二元適用事業の場合は、①の労災保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署へ、⑤雇用保険の保険関係成立届を所轄の公共職業安定所(ハローワーク)にそれぞれ提出します。完了したら、②と⑥概算保険料申告書(納付書のこと)で納付書を作成し、③・④の手続きを行います。
成立届を出さなかった場合
成立手続を出さなかった事業主に対しては、遡って労働保険料を徴収するほか、併せて追徴金を徴収することとなります。
また、事業主が故意又は重大な過失により労災保険に係る保険関係成立届を提出していない期間中に労働災害が生じ、労災保険給付を行った場合は、
事業主からさかのぼって労働保険料を徴収(併せて追徴金を徴収)するほかに、労災保険給付に要した費用の全部又は一部を徴収することになります。
まとめ
労働保険(労災・雇用保険)とは?加入手続きや概要をわかりやすく解説しました。
労働保険の概要がご理解いただけたかと思います。
知らなったでは済まされずに、罰則を科されるようになりましたので、経営者のかたは注意が必要です。
また、届出や納付書の記載方法は別途記事にしました。